もらわなきゃ損?いつ申請したらいい??家賃支援給付金!!
家賃支援給付金の解説【令和2年7月22日最終追記】
未曾有の新型コロナウイルス感染症の流行により、被害を受けられた皆様にお見舞いを申し上げます。
経営的に打撃を受けた、中小企業者・個人事業主の方を対象とした「家賃支援給付金」の給付が決定され、要領等の公表、申請の受付が開始されております。申請を検討されている方も多いと思いますので、制度内容について解説をいたします。
【記事の構成】
(1)概要
(2)給付対象
(3)給付額
(4)各論
①賃料が売上に応じて変動する場合
②賃借物件を転貸している場合
③賃貸借以外の形式により土地。建物を使用収益する契約を締結している場合
④申請のタイミングについて
⑤申請準備について
(1)概要
必要事項の入力および必要書類の添付をしたうえ申請を行うことで、法人の場合は最大600万円、個人の場合は最大300万円の給付をうけることができます。なお、申請期間は令和2年5月1日から令和3年1月15日となります。
(2)給付対象
(給付対象)
給付対象となる法人、個人事業主については「持続化給付金」とほぼ同様となっております。具体的には、
・法人について
資本金10億円未満の中堅企業・中小企業・小規模事業者、医療法人、農業法人、NPO法人、社会福祉法人など
・個人について
フリーランスを含む個人事業者
(事業継続、売上減少等の要件)
①2019年12月31日以前から事業収入(以下、売上)を得ており、今後も事業を継続する意思があること。
※2020年に創業した法人や開業した個人については現時点では給付対象外となっています。ただし、申請要領等において、これらの方々も給付対象とする方針であることが明記されています。
②2020年5月から2020年12月までの間で、以下のいずれかにあてはまること。
・いずれか1か月の売上が前年同月の売上と比較して50%以上減少している
・連続する3か月の売上の合計が前年の同じ期間の売上の合計と比較して30%以上減少している
※持続化給付金では設けられていない要件です
③他人の土地・建物を自身の事業のために直接占有し、使用収益(物を直接に利活用して利益・利便を得ること)をしていることの対価として、賃料の支払いを行っていること。
※持続化給付金では設けられていない要件であり、申請準備にあたっては注意が必要です(後述)
(3)給付額
(算定方法)
S:給付額(上限:法人600万円、個人300万円)
A:支払い賃料などの金額
①支払い賃料などの金額が75万円以下(個人の場合は37.5万円以下)の場合
S=A×給付率2/3
②支払い賃料などの金額が75万円(個人の場合は37.5万円)を超える場合
・法人の場合
S=300万円+(A-75万円)×1/3×6
・個人の場合
S=150万円+(A-37.5万円)×1/3×6
(支払い賃料などについて)
①賃料、共益費、管理費のほか、自社利用の駐車場代などの地代も対象となります。
また、賃料などは消費税を含んだ金額を用います。
②複数の土地・建物を借りている場合、すべての賃料の合計金額が算定の基礎となります・
(4)各論
①賃料が売上に応じて変動する場合(変動家賃の場合/法人・個人共通)
申請日の直前に1か月分として支払った賃料の金額と、2020年3月に賃料として支払った金額を比較し、低い金額を給付額の算定の基礎とします(要領「2-4-2.給付額の算定方法 3/3ページ」)。
(給付額の算定例/法人)
・7月に申請する場合
A:2020年3月に支払った賃料=70万円
B:申請日の直前に1か月分として支払った賃料の金額=60万円
A(70万円)>B(60万円)
よって、算定の基礎となる賃料は60万円
給付額=60万円×2/3×6=240万円
※一方、もし申請月を8月とした場合…
B=80万円
A(70万円)<B(80万円)
よって、算定の基礎となる賃料は70万円
給付額=70万円×2/3×6=280万円
となります。
このように賃料が変動する場合、2020年4月から12月のうちいずれかの支払い賃料が2020年3月の支払い賃料を上回るタイミングで申請をすることで給付額を最大化することができます。
融資を受けているなど短期的な手元資金を一定確保できており、かつ4月から12月のいずれかの賃料が3月の賃料を上回る可能性がある場合は申請のタイミングを見計らうというのも手法の一つです。
②賃貸物件を転貸している場合(法人・個人共通)
要領において、転貸(又貸し)を目的とした取引は給付額の算定対象からは外される旨が明記されています(要領「2-3-3.給付額の算定根拠とならない契約 1/2ページ」)。
(民泊や貸し会議室運営などスペースレンタル事業について)
この規定に照らしたうえで、民泊用物件の賃料やスペースレンタル用物件の賃料が給付の対象となるか否か弊所でもコールセンターに問い合わせを行いました。
その結果、民泊やスペースレンタル事業は「転貸(又貸し)を目的とした取引」に該当するため給付申請の対象外となるとの回答をされております。
(運送業者などが自社利用目的で賃借している駐車場の一部を転貸している場合)
このケースについてもコールセンターに問い合わせを行いました。その結果、給付申請の対象となる賃料はあくまで自社利用分のみで、転貸に係る部分の賃料は給付申請の対象外とのことです。
なお、実際に申請をするにあたっては添付する法人事業概況説明書の控え(法人の場合)の地代家賃と給付申請しようとする賃料等の金額が整合している必要があるとのことです。
また、転貸している部分に係る賃料について区分経理をせず“地代家賃”として会計処理している場合、申請しようとする賃料等の金額と添付する法人事業概況説明書の地代家賃の金額が不整合になってしまいます。この場合は、『別冊2-7. 例外⑦ 契約が存在しない場合』を準用してほしいとのことでした。具体的には、『様式5-4 賃貸借契約等証明書(契約書等が存在しない場合)』を作成し、転貸をしている旨、そのため添付書類間で金額が整合していない旨を理由記載欄に書く必要があるそうです。たたし、例外規定を利用する場合は通常より審査に時間がかかり、また場合よっては審査を通らない可能性もゼロではないことを承知してほしいとコールセンター担当者に一言添えられました。
③賃貸借以外の形式により土地、建物を使用収益する契約を締結する場合(法人・個人共通)
『2-3-1.給付額の算定の基礎となる契約・費用 2/2ページ』において、このような場合にも『別冊2-5. 例外⑤』や『別冊2-6. 例外⑥』を適用することで給付対象となる可能性がある旨が記載されています。ただし、審査に時間がかかる可能性があるとの注意書きもされています。
家賃支援給付金の申請が開始されてから、「業界団体によるガイドライン」に関する情報は徐々に更新されており、現時点では具体的に以下のようなケースが想定されています。
※以下はあくまで参考としての記載を目的としており概略的なものです。該当する可能性がある方は、直接業界団体にお問い合わせください。
・卸売業者等が卸売市場開設者等に市場利用料を支払っている場合
・国や地方自治体といった公園管理者に対し、公園内の一部の土地や施設を使用する許可を得ており、またそのための対価を支払っている場合
・漁業を行っている事業者が、漁港管理者に使用料を支払っている場合
など
なお、先述のとおり、業界団体のガイドラインは随時専用ページでアップデートされておりますので、今後、対象が増える可能性があります。
④申請のタイミング(法人・個人共通)
賃料は賃貸借契約により金額が固定されているケースも多いと思います。この場合、いつ申請をしても給付額は同じ金額になります。
一方、
・(新型コロナウイルス感染症により)家賃支払いの免除や減額を受けている場合
・賃料等の額が変動する契約の場合
・引っ越しや契約変更など2020年中に賃貸借契約の状態に変更があった場合
など、賃料に変動がある場合には、申請するタイミングによって給付額が変化します(例えば先述した「①賃料が売上に応じて変動する場合」などです)。
そのため、新型コロナウイルス感染症に伴う緊急事態宣言の発令などにより、資金繰りがひっ迫している場合は、一刻も早く申請せざるを得ないと思いますが、すでに融資などにより当面の資金繰りのめどが立っている場合は申請のタイミングを検討する余地があります。
⑤申請準備について
家賃支援給付金の申請にあたっては、申請をする賃貸物件すべての契約書を用意し、さらに契約書の必要箇所に印をつけるなどかなりの手間がかかることが予想されます。
また、契約更新などで、2020年3月時点および申請日時点で直接有効である賃貸借契約書がない場合は例外規定を用い、追加の説明書類を用意する必要があります。
申請サイトでは、入力内容の保存が可能なため、申請準備(必要事項の入力など)と必要書類の準備を並行して行い、万が一にも書類準備等が間に合わず申請ができなかったということにならないよう注意をしてください。
ただ、申請のタイミングや必要書類の準備などで悩ましい点もあると思います。そういった際は「YDK日本橋税理士事務所」へお気軽にご相談ください!