持続化給付金の解説(中小法人等) 【令和2年6月29日最終追記】 未曾有の新型コロナウイルス感染症の流行により、被害を受けられた皆様にお見舞いを申し上げます。 経営的に打撃を受けた、中小企業者・個人事業主の方を対象とした「持続化給付金」の給付が決定され、要綱等の公表、申請の受付が開始されております。「持続化給付金」の申請を希望される方も多いと思いますので、制度内容について解説をいたします。なお、記事が煩雑になることを避けるため、このページでは「中小法人等」のケースについて解説します。個人事業主の方は『持続化給付金の解説(個人事業主等)』の記事をご参照ください。
【記事の構成】
(1)概要
(2)給付対象
(3)給付額
(4)各論(各種特例/抜粋)
①B-1 2019年新規創業特例
②B-2 季節性収入特例
③B-3 合併特例
④B-6 法人成り特例
⑤C-1 2020年新規創業特例
※③から⑥は2019年から2020年3月にかけて開業した法人の特例です。この期間中に開業した法人でも、いずれかの特例に該当すれば申請できる可能性があります。
(5)申請にあたっての疑問点や注意点
(1)概要
給付対象となる法人は、必要書類を添付のうえ申請を行うことで
最大200万円の給付をうけることができます。なお、申請期間は令和2年5月1日から
令和3年1月15日となります。
(2)給付対象
【法人形態】
①中小法人等(資本金10億円以上もしくは常時使用する従業員の数が2,000人を超える大企業を除く)
②医療法人、一般社団(財団)法人、公益社団(財団)法人、NPO法人、社会福祉法人など会社以外の法人
なお、2020年に開業した法人については「C-1 2020年新規創業特例」が定められています(後述)。
【事業継続、売上減少等の要件】
①
2019年以前から事業により事業収入(売上)を得ており、今後も事業を継続する意思があること。
※2019年に開業した法人については「B-1 2019年新規創業特例」、2020年に開業した法人については「C-1 2020年新規創業特例」が定められています。
②
2020年1月から2020年12月の間の任意のひと月について(以下、「対象月」)、
前年同月比で事業収入が50%以上減少していること。
(3)給付額
①算定方法
S:給付額
A:対象月の属する事業年度の直前の事業年度の年間事業収入
B:対象月の月間事業収入
S=A-B×12(上限200万円)
②算定例(3月決算法人)
A(対象月の属する事業年度の直前の事業年度の年間事業収入)=500万円
B(対象月の月間事業収入)= 20万円
対象月の前年同月の月間事業収入=50万円
・売上減少要件の判定
50万円×50%=25万円>20万円
→要件を満たすため給付対象
・給付額
500万円―20万円×12=260万円>200万円(上限)
→給付額は200万円(上限)
③申請のタイミング
新型コロナウイルス感染症に伴う緊急事態宣言の発令などにより、資金繰りがひっ迫している場合は、給付対象となることが分かったタイミングで申請せざるを得ないと思います。
一方、すでに融資などにより当面の資金繰りのめどが立っている場合は申請のタイミングを検討する余地があります。というのも、「②算定例」からわかるように、前年度の年間事業収入から対象月の事業収入×12を引いた金額が給付額となるため対象月の金額が低いほど給付額が増えます。
事業収入が減らないことがベストですが、コロナ禍の収束が見通せない現状では、今後も事象収入が減少する可能性を見通し、できるだけ200万円にちかい金額が給付されるタイミングをまって申請するのも一つの手法といえます。
(4)各論(各種特例/抜粋)
ここまででみてきたように、持続化給付金の申請概要はそこまで難しくはありません。
一方、新規創業特例など10の特例が設けられており、これらに該当する場合は追加の提出書類が設けられることもあるため注意が必要です。
【B-1 2019年新規創業特例】
①この特例の対象となるケース
2019年1月から2019年12月までの間に法人を新規設立している場合
②給付額の算定方法
・算定方法
S=A÷M×12-B×12
S:給付額(上限200万円)
A:2019年の年間事業収入
M:2019年の設立後月数(設立した月は、操業日数にかかわらず1か月とみなす)
B:対象月の月間事業収入
・算定例(2019年10月設立、3月決算法人)

A(2019年の年間事業収入)=180万円
M(2019年の設立後月数)=3か月
B(対象月の月間事業収入)= 20万円
・売上減少要件の判定
(A÷M)×50%=(180万円÷3か月)×50%=30万円>20万円
→要件を満たすため給付対象
・給付額
(180万円÷3カ月)×12―20万円×12=480万円>200万円(上限)
→給付額は200万円(上限)
③必要書類
・対象月の属する事業年度の直前の事業年度の確定申告書の控え
・対象月の売上台帳等
・通帳の写し
・履歴事項全部証明書(設立日が2019年1月1日から12月31日のものに限る)
【B-2 季節性収入特例】
①この特例の対象となるケース
収入に季節性がある場合など、特定期間の事業収入が年間事象収入の大部分を占める事業者については、下記の適用条件を
いずれも満たす場合、特例の適用を選択することができます。
適用条件① 2020年の任意の1か月を含む連続した3か月(以下、対象期間)の事業収入の合計が、前年同期間の3か月(以下、基準期間)の事業収入の合計と比べて50%以上減少していること。
→つまり、対象月(1か月)でなく対象期間(3か月)で売上50%減の判定を行う
適用条件② 基準期間の事業収入の合計が基準期間の属する事業年度の年間事業収入の50%以上を占めること。
→月当たりの事業収入の変動が大きいかの判定
②給付額の算定方法
・算定方法
S=A-B
S:給付額(上限200万円)
A:基準期間の事業収入の合計
B:対象期間の事業収入の合計
・算定例(2019年10月設立、3月決算法人)

基準期間の年間事業収入=650万円
A(基準期間の事象収入)=600万円
B(対象期間の事業収入)= 250万円
・売上減少要件の判定(適用条件①の判定)
600万円(基準期間の売上合計)×50%=300万円>250万円(対象期間の売上合計)
→要件を満たす
・適用条件②の判定
600万円(基準期間の売上合計)>650万円(基準期間を含む事業年度の年間売上合計)×50%
→要件を満たす
以上より、2つの要件を満たすので適用可能
・給付額
600万円―250万円=350万円>200万円(上限)
→給付額は200万円(上限)
③必要書類
・基準期間の属する事業年度の確定申告書の控え
・対象月の売上台帳等
・通帳の写し
④注意事項
主に農業、漁業を行っている法人を想定していると思われますが、適用条件さえ満たせばこの特例を選択して申請することは可能です。そのため、建設業などでもこの特例を使うことはありえます。
ただし、
特例により申請した場合、一般的に審査に時間が要されているといわれており、実際、この特例を用いて申請したところ入金目安の2週間を大幅に超えた1か月半後にようやく入金された事例もあります。
そのため、この特例を使わなければ申請できない方はやむをえませんが、それ以外の方で
通常の申請が可能であれば、そちらで申請することをお勧めします。
【B-3 合併特例】
①この特例の対象となるケース
比較しようとする対象月と前年同月の間に合併を行っている法人。
②給付対象となるかの判定方法
対象月の月間事業収入が、前年同月の合併前の各法人事業収入の合計から50%以上減少している
③給付額の算定方法
・算定方法
S=A-B×12
S:給付額(上限200万円)
A:合併前の各法人の2019年の年間事業収入の合計
※2019年度でなく2019年であるため注意してください B:合併後の法人の対象月の事業収入
・算定例(X社とY社が2020年2月1日に合併し、Z社を設立。対象月2020年3月)
A1:X社の2019年の年間事業収入 300万円(2019年3月の月間事業収入30万円)
A2:Y社の2019年の年間事業収入 200万円(2019年3月の月間事業収入15万円)
B:Z社の3月の事業収入 20万円
・売上減少要件の判定
(30万円+15万円)×50%=22.5万円>20万円
→要件を満たすため給付対象
・給付額
(A1+A2)-B×12=(300万円+200万円)―20万円×12=260万円>200万円(上限)
→給付額は200万円(上限)
③必要書類
・合併前の法人それぞれの2019年の年間事業収入がわかる確定申告書の控え
※2019年が複数の事業年度にまたがる場合は、2019年中の全ての月間事業収入がわかるもの
→仮にA1社が3月決算の場合、A1社は2019年3月期及び2020年3月期の確定申告書の控えが必要になります
・対象月の売上台帳等
・通帳の写し
・履歴事項全部証明書(合併に関するもの)
④注意事項
2019年1月から12月の間に合併した場合は、【B-1 2019年新規創業特例】の適用が可能です。給付額を試算し、有利になる特例を選択することをお勧めします。
【B-6 法人成り特例】
①この特例の対象となるケース
比較しようとする対象月と前年同月の間に個人事業者から法人化(いわゆる法人成り)した場合
②給付額の算定方法
・算定方法
S=A-B×12
S:給付額
A:2019年の法人化前の個人事業者の年間事業収入
B:対象月における法人化後の法人の月間事業収入
③必要書類
・個人事業者として提出した2019年分の確定申告書の控え
・対象月の売上台帳等
・通帳の写し
・法人設立届出書
・個人事業の開業、廃業届出書
・履歴事項全部証明書
④注意事項
・2019年1月から12月の間に法人化した場合は、この特例は適用できません。
ただし、【B-1 2019年新規創業特例】の適用が可能です。
・給付額の上限は、法人設立年月日により異なります
法人設立年月日が2020年4月1日までの場合→上限200万円
法人設立年月日が2020年4月2日以降の場合→上限100万円
・法人設立届出書については、以下の要件を満たしている必要があります
「設立の形態」欄において、“個人企業を法人組織とした法人である場合”を選択していること
「整理番号」欄に個人の確定申告番号が記載されていること
税務署の受付印が押印されていること
・個人事業の開業・廃業等届出書については、以下の要件を満たしている必要があります
「廃業の事由が法人の設立に伴うものである場合」欄に記載があること
その法人名・代表者名が申請内容と一致していること
税務署の受付印が押印されていること
【C-1 2020年新規創業特例】
①この特例の対象となるケース
2020年1月から3月の間に法人を設立した場合
②給付額の算定方法
・算定方法
S=A÷M×6-B×6
S:給付額(上限200万円)
A:2020年1月から3月の間の事業収入の合計
M:法人設立月から2020年3月までの月数(設立した月は、操業日数にかかわらず1か月とみなす)
B:2020年新規創業対象月の月間事業収入
・算定例(2020年に法人設立)

A(2020年1月から3月の間の事業収入の合計)=140万円
M(法人設立月から2020年3月までの月数)=2か月
B(2020年新規創業対象月の月間事業収入)= 30万円
・売上減少要件の判定
(A÷M)×50%=(140万円÷2か月)×50%=35万円>30万円
→要件を満たすため給付対象
・給付額
(140万円÷2カ月)×6―30万円×6=240万円>200万円(上限)
→給付額は200万円(上限)
③必要書類
・持続化給付金に係る収入等申立書(中小法人等向け)/指定様式
・通帳の写し
・履歴事項全部証明書(設立日が2020年1月1日から3月31日のものに限る)
④注意事項
・「持続化給付金に係る収入等申立書」には税理士による署名等が必要になります。また、特例適用となるため、特段の不備等がなくても入金が一般的な目安の2週間を超える事例もあります。
・2019年中に法人を設立していても、2019年の事業収入が発生していない(0円)場合はこの特例を適用することができます。ただし、算定式のMは3に固定されますので注意が必要です(2019年12月に法人設立、事業収入の発生が2020年2月の場合でも、Mは2か月でなく3になります)。
(5)申請にあたっての疑問点や注意点
①法人に複数の事業所がある場合、事業所ごとに申請することは可能か
→法人単位での申請となるため、事業所ごとの申請はできません
②2019年に個人事業者として複数の事業を行っていたが、2020年4月1日までの間にそれぞれの事業を複数法人(ex A事業をA法人、B事業をB法人)として設立した場合の申請はどうなるのか
→過去の事業収入を証明する証拠書類(本ケースでは2019年の個人確定申告書)が同一名義の場合、申請は一度(1法人)に限られます。そのため、A法人とB法人で申請することはできず、いずれかの法人を対象法人として申請することになります。
なお、法人が分割により複数法人になっている場合も、1法人しか申請はできません。
③持続化給付金は課税対象となるか
→なります。ただし、持続化給付金を益金として処理してなお、損金のほうが多く課税所得が生じなければ、結果的に法人税は発生しません(厳密には、均等割のみ発生します)
以上は、公式サイト(https://www.meti.go.jp/covid-19/jizokuka-qa.html)に掲載された公式見解です。
④当社は資本金15億円の会社の100%子会社(なお、当社の資本金は100万円)です。この場合、当社は給付対象となりますか?
→なります。給付対象要件の資本金要件の判定はあくまで会社単位で行います(他会社との資本関係は考慮しません)
※「B-4 連結納税」特例において、上記と同様の旨が記載されていますが、連結納税を行っていない場合でも同様の解釈となります(コールセンターに問い合わせたうえで正式にいただいた回答です)。